独白
私が私を語るほどに、私から離れてしまうのは、何故でしょうか?
身を投げた漆黒の太陽が、遺書のごとく焼き付けた、ひと夏の影絵は、トイレの汚物入れの中で、真っ赤に滲んで、泣きじゃくるばかりです。
殴られた痣はすぐに消えてしまった。
いっそ消えずに一生残ればよかった。
誰かの恨む理由をこの身体に誇示して、全てを切り裂く免罪符となれ
物心ついた私は白痴で気狂いで、あなたがそう呼ぶから、それにふさわしい人間になった。
「どこにでもいる真面目な子でした」
「まさかあの子が」
世間様の暇つぶしに辱められた自尊が良からぬ企を、身ごもるのも必然で、言葉を殺した。
あれが死に損ないの言葉ゾンビ
「言葉を殺した」という言葉だけが残った。
途方にくれた一五歳の夏
流れていった涙や後悔の時間に、今更しがみつくほどの、未練は持ち合わせず、過去の痛みが、全て報われた訳じゃない。私の痛みは君の失望にこそ芽吹く。
この物語はフィクションであり、実在する事件、団体、人物とのいかなる類似も必然の一致だ。
だが、現実のほうがよっぽど無慈悲だ。
ひぐらしの声、夕涼み、恋占いは、フルスモークのハイエースに連れ去られた。
妖精は事件性にも宿るか、底無し沼の水面にたかる蛇達の祈りか、被虐者の呪いか、愛されなかった分や、報われなかった分や、人それどれの身体に空いた無数の穴ぼこ。
埋め合わせる為に、犠牲になった何かが、差し詰め生涯悔やむことになる、むごたらしい致命傷、桃李まや、殉教者や、死にたがりの志願者、結局のところ誰もが未来の加害者
「まさかあの子が」と口走る前に顧みる。
私の過去の痛みはあの子の為にこそ使う
「言葉にならない」
気持ちは言葉にするべきだ
「例えようのない」
その状況こそ例えるべきだ
「言葉もない」という言葉が何を伝えてんのか
君自身の言葉で、自身を定義するんだ
流れていった涙や、後悔の時間に今更しがみつくほどの未練は持ち合わせず、過去の痛みが、全て報われたわけじゃない
私の痛みは君の失望にこそ芽吹く
この物語はフィクションであり、実在する事件、団体、人物とのいかなる類似も必然の一致だ
だが、現実のほうがよっぽど無慈悲だ
音楽や小説、映画とか漫画、テレビ、ラジオ、インターネット
母が赤ん坊に語る言葉、友人との会話、傷つけられた言葉、嬉しくてたまらなかった言葉
喜び、悲しみ、怒りだとか憎しみ、かつての絶望が残す、死ぬまで消えない染み
それが、綺麗な思い出まで侵食して汚すから、思い出も言葉も、消えてしまえばいいと思った
言葉は積み重なる
人間を形作る
私が私自身を説き伏せてきたように
一行では無理でも、十万行ならどうか
一日で無理でも、十年を経たならばどうか
奪われた言葉が、やむにやまれぬ言葉が、私自身が手と下し、息絶えた言葉が、この行く末を決定づけるとするなら
その言葉を再び私たちの手の中に
奪われた言葉が、やむにやまれぬ言葉が、私自身が手を下し、息絶えた言葉が、この行く末を決定づけるとするなら
その言葉を再び私たちの手の中に
再び私たちの手の中に
再び私たちの手の中に
今再び私たちの手の中に
今再び私たちの手の中に
言葉を取り戻せ
言葉を取り戻せ
言葉を取り戻せ
言葉を取り戻せ
言葉を取り戻せ
言葉を取り戻せ
言葉を取り戻せ
言葉を取り戻せ
#独白